NO.67
塚本一実
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今年入会した、新入会員の塚本一実と申します。
私の専門はいわゆる一般的な言葉で表現すると“現代音楽”ですが、個人的には“現代の音楽家”という意識で創作活動を行っています。また、大学教員としても働いています。

私は先日、第2回ピアノ悠々に参加させて頂きました。映画音楽を簡単なピアノ曲に編曲するという企画でした。このコンサートの満員盛況には驚きました。お客様の反応、企画者の音楽会への意識、作編曲家の音楽への厳しさ等を痛感いたしました。三日間眠れなかったほど、私には衝撃的な出来事でした。ポピュラー音楽界では、お客様の反応が直に実感できる、という喜びと恐れも同時に経験いたしました。音楽界は作編曲家と演奏家と聴衆で創られていくことを改めて意識しました。作編曲家協会に入会したクラシックの作曲家には刺激が強すぎるくらいです。

ポピュラー音楽界における編曲家の仕事はとても重要です。私も最近は、過去の自作品を需要に合わせ編成を変え、編曲しています。オーケストラ作品を吹奏楽編成へ、Trb.とPf.の作品をTrb.と吹奏楽編成へなど、音楽と教育の関係から吹奏楽編成への編曲が多いです。そして、20年以上も前の自作品の編曲には、格別な味わいがあります。とても楽しんでいます。

“現代の作編曲家”は「芸術とは何だ」「音楽とは何だ」というスタンスで創作に取り組んでいると思います。また、「音楽における真実」「音楽における喜び」に向かっての創作行為である、という事は疑いの無い所だと思います。グローバル化された今の時代、ポピュラーもクラシックも他のジャンルの音楽も、かなりお手軽に、身近に簡単に聞くことができます。音楽ジャンルの境界線がだんだん取れてくることもこれからの時代の必然ではないかと考えています。社会が要求する音楽と音楽家が求める「真の音楽」が合致してこそ、豊かな社会現象のひとつになると信じ、そこへ邁進していると理解しています。新しい音楽が生まれてこそ、音楽の世界が活性化し息づいていくことは間違いありません。作品は古く演奏だけが新しく発展していく音楽界は考えられません。

そんな中、このJCAAに入会させて頂き、先日の「The Chorus Plus」の作品公募の内容に、ポピュラー音楽と現代音楽の融合といった意味の言葉があり、感動いたしました。
様々な音楽がお互いに刺激し合い、新たものへ進化していく時代が今であり、そこから生まれる音楽界の未来に強く希望を持ちました。


◎塚本一実(つかもとかずみ) 略歴
1963年、東京生まれ。
1989年、東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。日本交響楽振興財団主催第16,25回作曲賞入選。
2009年、Universal marimba Composition Competition 2009/2nd Prize & Publishing Prize。2010年、International Music Prize™ for Excellence in Composition 2010/Honorable Mention Citation awarded。
作曲を松村禎三、浦田健次郎、山田泉の各氏に師事。主要作品に"OSIRIS" for orchestra(第16回日本交響楽振興財団作曲賞入選)、"Mirrors" for Trombone and Piano、"未来からの予言"~テューバ7本と語りのために~(マーストリヒト・コンセルヴァトリウムにてオランダ初演)、組曲"2001年─武蔵野"~合唱とオーケストラのために~(武蔵野市民芸術文化協会委嘱作品)、「道」オーケストラのために(第25回日本交響楽振興財団作曲賞入選)、「2台ピアノのための光芒」(ウラジオストック極東芸術大学にてウラジオストック初演)、“Description”for solo piano ~Sorrow、Longings、Resignation~、「聖浄白眼」~中原中也の詩による~(ライプツィヒ音楽大学にてドイツ初演)、CENOTE~for solo marimba~(Universal marimba Composition Competition 2009/2nd Prize & Publishing Prize。2012年ベルギーにて楽譜出版)、Increasing lights ~ for solo flute~(International Music Prize™ for Excellence in Composition 2010/Honorable Mention Citation awarded)。

現在、常葉学園短期大学音楽科准教授、フェリス女学院大学非常勤講師。日本現代音楽協会、日本著作権協会、日本作編曲家協会会員。
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