NO.109
穴沢弘慶/Hironori "Guts" Anazawa
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皆さまはじめまして!JCAAのミーハー係(笑)、穴沢弘慶(Hironori "Guts" Anazawa)と申します!

山下康介先生にご推薦いただき入会させていただいて以来、図々しくも各種イベントに参加させていただき、憧れの先輩先生方にお目にかからせていただけ幸せに思っております。今後とも末長くよろしくお願い致します。

学生時代から「今月の作家」に取り上げていただくことが夢で執筆の練習までしていたのですが(笑)、いざ書かせていただくとなると何を書いたら良いかわからず、留学時代の話をしようか、今の私があるのもこの方のおかげだと言っても過言ではない山下康介先生のお話をさせていただこうか、など色々考えたのですが・・・

焼酎の話をさせてください(笑)!

私は高校卒業後に単身渡米しアメリカの大学・大学院で勉強をしておりまして、現地では学生でも手にしやすいビールやワインで友人達と楽しい時間を過ごしていました。帰国後はサワー系を飲んでおりましたが、ありがたくも山下先生のお手伝いをさせていただいていたとは言えお恥ずかしながら私個人の仕事がほとんどなく、 酔うための度数が高いお酒を探すことに。

そこで巡り合ったのが、幼稚園生の頃に当時住んでいた区の区報にも大ファンであることを特集していただいた程大好きであった志村けん師匠が愛飲されていた「芋焼酎」。

身近で手に入る芋焼酎を一通り飲んでしまい、もっと色々な銘柄を飲んでみたいとの想いで都内の老舗酒屋さんを巡ることにしたのですが、そこで出会った芋焼酎達が私の焼酎ライフを一変させることになります。美味しいのはもちろんですが、他の蔵元さんにはない個性を持っている。同じ芋、麹菌、設備を使っているのにどうして個性的な味わいを出せるのだろう。そんな疑問を持った私は本場鹿児島の蔵元さんにお願いし取材の旅に出かけることにしました。

当時20代で、しかも東京で音楽の仕事をしているということで興味を持っていただき、大変親切にしてくださいました。予習通り、基本的な製造工程はどの蔵元さんもほぼ同じでしたが、一方で細部への拘りが本当にすごい!機械化が当たり前のこの時代に敢えて昔ながらの手造りに拘ったり、蒸留機の高さを数ミリ単位で調節したり、農家さんとコラボして特別な芋で仕込んだり、ここでは書き切れない程どの蔵元さんも独自の拘りを持っていらっしゃることを教えていただきました。

遂に「焼酎の造り」に興味を持ってしまった私は、「仕込みの時期にまた遊びに来てください」という社交辞令を真に受け(笑)、それから毎年仕込みの時期にお邪魔し焼酎造りに参加させていただくようになります※。実は大学院時代の師匠Alan Silvestri先生がワイン造りをされているので無意識ながら師匠を引き継いでしまいました(笑)。

(※この時期はどの蔵元さんも忙しくされており、一般的に見学や訪問は受け付けていらっしゃらない蔵元さんが多いのでご迷惑にならないようお気をつけください)

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私が毎年伺っている蔵元さんはご家族経営の小さな蔵元さんばかり、年間で作れる量には限りがあります。しかし、無理に生産量を上げて質を低下させないよう慎重にされていらっしゃることはもちろん、毎年何かしらの新しいチャレンジを取り入れており、それを見聞きするのをいつも楽しみにしています。実際今の私の作編曲に対するアイディアやモチベーションは蔵元さん達からいただくことが多く、形は違えど同じものづくり、最初は「焼け酒」だった焼酎も今では「ライバル」や「研究対象・モチベーション」へ変化してしまいました。

音楽の仕事をさせていただいてありがたいと常々想うのは、東京で仕事をしていても作品を通じて全国で拙作の音楽を聴いていただけるところです。これからも私の音楽人生に多大なる影響を与えてくれた芋焼酎を微力ながら応援させていただきつつ、鰻の山椒のように「無くても困らないけどあったら良いな」と思っていただけるような音楽を作っていければな、と思っております。


〇穴沢さんの第二回はこちらから


◎穴沢弘慶/Hironori "Guts" Anazawa(あなざわひろのり) Profile
(作編曲、吉永酒造・白石酒造・中村酒造場公認焼酎マイスター)
米映画「Back to the Future」等で著名なAlan Silvestri氏を師匠に持ち、同氏のもとで学んだハリウッド式音楽制作をベースに劇伴音楽の作編曲、及びコンサート用編曲などをメインに音楽活動を展開。
より良い音楽制作を目指し日々切磋琢磨するほか、制作環境の向上を目指しプロジェクトに関わる全ての人との輪を大切にしており、その築き上げたチームワークとリーダシップは唯一無二で楽しい現場と数多くの関係者に絶賛されている。
芋焼酎をこよなく愛し、本場鹿児島の複数酒造さんから焼酎マイスターの肩書きを公認される程。芋焼酎の普及に貢献するほか、仕込みの時期になると鹿児島に足を運び製造や新しい可能性の研究を行なっている。
(代表銘柄)
吉永酒造「利八」、白石酒造「天狗櫻」、中村酒造場「なかむら」
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