NO.118
小畑貴裕
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僕が劇伴音楽を担当出来るようになるまでの道のり

僕は小さい頃から作曲家志望ではありましたが、20代は福岡を中心にジャズピアニストとして活動しつつ細々と作曲活動もしておりました。地方での作曲のお仕事といえばローカル番組のCM音楽制作、よさこい音楽などで今みたいにネットが充実してなかったのでお仕事も限られてました。
それから、もっと自分の活動を広げるために29歳の時に大奮起して上京を決めました。ところが当時は何もつてもなく、片っ端から好きな作曲家の方々にデモテープを送ったりしておりました。すると、ある時林ゆうきさんから連絡をもらえてアシスタントとしてお仕事ができるようになりました。
その頃は作編曲でシベリウスで譜面を書いたりDAWで簡単なデモ程度しか作ることができなかったですが、段々とデモも音源買ったり操作を覚えて、自分がイメージした音を音源として形にできるようになりました。
そこから、知り合いのつてだったり紹介してもらいつつ、自分の作品が取れるようになってきたのですが、実は劇伴作家としてデビューする前に謎のデビューを果たしてしまいました。

その経緯は、「植木等とのぼせもん」というドラマで林ゆうきさんが担当することが決まり、その中で当時の古い曲をアレンジする仕事を僕に依頼してもらえてたのですが、別件で「ピアノが弾けて、メガネかけてて、30歳ぐらいで、昭和顔の人w、探してるんだけど、役者とか興味ある?!」
とのことで、その候補にあがりました笑。その話をいただいた当時は衝撃を受けた思い出があります。まだ自分名義の作品を担当することがなく、なんでもチャンス!!と思ってたので、お引き受けすることにしました。

最初は、うなづいたり笑ったり踊ったりふざけたりするだけでいいから、と聞いていたので、台本はそこまで読んでおりませんでして、初日、クランクインと言いましょうか、その日に俳優さんたちとお会いし、撮影がスタートしました。
すると、最後の撮影タイムになり、なんとみなさん読み合わせの練習などしてまして、小畑さん、よろしくお願いします!!
と!!!なんと、最新の台本には僕のセリフがあるではないですか!!!!
そこから、僕の役者への道のりは始まりました。
そんな流れで、音楽録音より撮影の方が大変だった思い出があります。
しかし、現場の皆さんやスタッフさんと仲良くさせていただきましたし、音を作るだけでは分からなかった事などたくさんのことを学ばせて頂きました。
そしてその作品以降、そのチームから作品の依頼をいただき、作曲家としてお仕事もさせていただけたのでした。
劇伴のお仕事ができるようになるのは、人それぞれだと思うし、何がきっかけになるか分からない世界なので、音楽以外のことは無駄なことと思わず、いろんなことに挑戦した方が音楽にも幅が出てくるし僕はいいと思います!

以上ーー僕が劇伴が担当出来るようになるまでの道のりでした、ちゃんちゃん!!


◎小畑貴裕(おばたたかひろ) Profile
1984年生まれ。大分県出身。4歳より鍵盤楽器を始め、14歳からジャズに傾倒する。 作編曲、オーケストレーションを河野敦朗氏、ジャズピアノを田村勝哉氏、クラシックピアノを宮崎由紀子氏各氏に師事。
大学在学中にジャズスポットでプロとして演奏活動を開始。演奏では、水瀬いのり、サラ・オレイン、藤沢音楽朗読劇などでキーボーディストとして参加。
2019年に音楽担当したアニメ『約束のネバーランド』では、Anime Trending 6th で Best Award Soundtrack で1位に選ばれ、中でも『イザベラの唄』は世界的に沢山の方々に聴かれている。
自身のジャズサウンドを様々なジャンルに融合させるのを得意とし、オーケストラからバンドサウンド、ダンスミュージックを取り入れるなど幅広い。

twitter https://twitter.com/atabobata
HP https://www.atabostudio.com/


※掲載は所属当時

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