No.124
成田 勤
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 初めまして、成田と申します。フリーランスでゲーム音楽を中心に作編曲をしております。

 最近になって、10代から20代前半の頃に音楽を一緒にやっていた仲間と再会し、昔を懐かしむ機会も出てきました。吹奏楽演奏会の作品公募に入選したのが20歳の時、それが初めて作曲で対価をいただいた機会でもあります。そして気付けばそれから20年近く、その後初めて出版物に関わった時から見ても15年。生涯現役の方も多い作編曲家の中で見るとまだまだ若造ですし、気持ちも駆け出しの時からなにも変わっていないつもりが、世間的にはすっかりおじさんになっておりました。

 振り返ってみると、両親が音楽家のため、音楽に触れる機会の多い環境で育つ一方、ゲーム・テレビっ子でもあった少年時代。譜面の読み方や耳コピなどはゲーム音楽で覚え、その後に吹奏楽や合唱の音楽に触れ、バンドでギターやキーボードに触れ、シンセサイザーに触れたことがきっかけで打ち込みも始め、こうして見ると現在ゲーム音楽の仕事をしていることは一見必然であるかのようにも思えますが、1つの奇跡的な出会いがあって現在の自分があります。

 初めてゲーム音楽を意識したのが小学生の頃、ファイナルファンタジーIVやVが発売された時期でした。母が開いていた教室の発表会で、初めて人前でピアノを弾いた時の曲がファイナルファンタジーピアノコレクションの楽曲。そのコメントを読んで知ったのが、作曲者の植松伸夫さん。その後も新しいタイトルが出るたびにサントラや楽譜を買い、自分が大人になってからもその活動を追っておりました。

 ある時、その植松さんが、当時自分もリスナーだったWebラジオで「なにか一芸持った人」を募集して、そこに応募することに。そうしたら数日後に連絡をいただき、まさかの当時手掛けていたアニメの劇伴をご一緒させていただくことになりました。それが自分にとって初めての劇伴仕事でもあります。以来、それまでの人生で聴いてきた楽曲を編曲したり、作曲者本人と一緒に演奏することになったり、その人が作る新しい楽曲にも触れさせていただいたりと、恐れ多くもたくさんの経験をさせていただきました。そんな植松さんを初めとして、たくさんの人から影響を受け、たくさんの人にお世話になりながら、これまでの作編曲人生を歩んできました。このJCAAにおいても、同じく子供の頃から憧れを抱いていた大先輩や、素晴らしい仕事をされている近い世代の方もたくさん在籍されており、末席に加えていただき大変光栄に思っております。

 以前、登壇したオーケストラコンサートで、お客さんから「今回のコンサートをきっかけにオーケストラがクラシックを聴くようになりました」と言われ、ハッとしたことがありました。それまで人から与えてもらうばかりだった自分が、まさか人に影響を与えられることがあったのかと、今でもその時のことを思い出します。

 それ以来、いつか将来、自分が見聞きしてきたもの、与えられてきたものと同じくらい、人に何かを伝えられるようになれたらと思っています。この仕事をしてきて辛いことも数え切れないくらいありますし、凹むこともしょっちゅうですが、結局音楽しかできないと思って始めた仕事ですし、現在もそれは変わっておりません。これからも大切にしたい気持ちを原動力に、がむしゃらに続けていこうと思います。

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(某日、ライブリハーサル終了後)

◎成田 勤(なりたつとむ) Profile
1984年1月14日、東京都八王子市生まれ。
幼少の頃よりピアノ、後に吹奏楽・合唱・ロックバンド等を経験。作曲を16歳より独学。
代表作に「グランブルーファンタジー」及び派生作品、「ファイナルファンタジーシリーズ」「サガシリーズ」「聖剣伝説シリーズ」等のリメイク作品を初めとした編曲など。
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