NO.17 2002/7/23

●Profile  

  寺嶋民哉 Terashima Tamiya

 夏も真っ盛り。さぁ、山だ、海だっ!
 ・・・なんてわけにもいかないなぁ。忙しくなりがちの季節なんだけど、今年も夏らしい夏を満喫する事は無さそう。あーあ、どっか行きたいよなぁ。
 丁度W杯があっていた6月は暇だった。TVでほぼ全試合観れるほどの時間があり、それをささやかな幸せにも感じていたのだが、暇もあまり長く続くと、次の仕事に脳の細胞が復帰するまでに結構な時間がかかってしまう。時々、「ありゃ・・・曲ってどうやって作ってたっけ?」と思う事さえある・・・。  それにしても我が儘なものだ。暇な時期が続けばどんどん不安になるくせに、忙しい時期が続けば「ヒマくれぇ〜」と叫びたくなる。往々にして、しばらく暇な時期が続いたと思ったら、次は仕事を断らなければならないほどいっぺんに舞い込んで来たりするもの。そのたびに「もっと効率よくコンスタントに入って来ないものか」と愚痴りたくもなるけど、しかし良く良く考えてみると、たとえば「半年どかっと遊んで、半年必死に仕事する」っていうような生活の方が、つまるところ性に合ってるみたいだしなぁ・・・だだっ子か俺は・・・。

 でも、取りかかるまでの腰が重くなってしまったのは、いつの頃からだったろうか?・・・あ、生まれつきか・・・。

 〆切が迫ってくると、うなされるような悪夢をみることも多くなってくる。オーケストラが既にスタンバイしてるスタジオに入るけど、スコアがまったく出来上がってないというような夢もよく見るのだが、そういうの以外では、自分が学生になった夢ってのも何故か多いんだけど、これはもう最悪。授業もまったく頭に入らないし、ほとんど開く事の無かった新品同様の教科書を開いてみても、呪文書でも眺めてるかのようにさっぱりわからない。クラスの中で自分だけが落ちこぼれ取り残されていて、友人らの顔を見るのも辛く、だからもう学校にも行きたくなくなってくる。なんちゅうこっだ、夢で不登校になっていく辛さを疑似体験してる・・・。その悪夢から目が覚めると、「ああ・・・良かった。あの辛さに比べたら、まだ〆切に追われてる方が百万倍マシだ」と、心底ホッとすると同時に、〆切くらいで辛いなんて思ってる自分がやや恥ずかしくもなる。
 どの夢も、実際にそういう経験があったってわけじゃないんだけど、追われてる感覚がそういう夢をみさせるのだろうなぁ。もしかしたら、夏休みの終わりになって宿題に追われてた小学生の頃から、本質的にはいかほども成長してないのかもしれない。


 仕事に追われている最中に限って、他にやりたい事が次々と浮かんでくるものだろうか。「この仕事が終わったら、絶対に旅行にいくぞ〜」とか、「本が読みたい」「映画を観に行きたい」「庭の草むしりをやろう」などなど・・・。そのくせ、いざ仕事が一段落すると、な〜〜んにもする気が起きないし、誰かから尻を叩かれない限り、しばらくはゴロゴロと過ごし、ゾンビのように何もしない。困ったもんだ・・・。
 それから、不条理なことに時間の流れ方だって、思い方次第で相当違ってくる。「やべーなー、〆切に間に合うだろうか」と思ってると、時間は容赦なく流れていく一方、「早く終わらせてゆっくりしたい」なんて考えると、それから解放される〆切の日までの道のりが、とてつもなく長いものに感じてしまうし。相対性理論のなんと残酷な事よ・・・。

 また、自分で自分の時間を管理しなくちゃならないって事が、時々きつく感じることもある。当たり前のことだが、サボったところで、どうせやんなくちゃならんわけなんだから、後で自分がきつくなるだけだし・・・。そういう中で過ごしていると、打ち合わせやスタジオなどのような物理的時間の制約さえ、どこか心地よくも感じてしまう。だったら「誰かが俺のペース配分も決めてくれたらもっと楽になるのかもしれない」だとか、「命令してくれたらちゃんとやるさ」などと無い物ねだりに思ってしまうけど、それもちょっと考えたら、そんなことは絶対無理な人種である自分に気づく。そんなことまで細かく決められた日にゃ、やる気なんてますます起きなくなるに決まってる・・・だだっ子か、俺は・・・。

 ほんとに身勝手な事ばかり考えているんだが、もちろんやる気が無いのではない。やる気はめいっぱいあるんだけど、「今」やる気が起きないだけ・・・う〜ん、言い訳にもなってないか(笑)。

 毎度毎度、こういう事を繰り返していると時々、自分は本当に音楽が好きなんだろうか?と疑問に思うこともあったけど、まぁそれは取りかかる前〜最初のワンフレーズが生まれるまでだけの話だと気づく。そこさえ乗り越えペンが乗ってくる頃には、その疑問はすっかり消え去ってしまうし、自分の満足のいく作品が出来上がった時、最高の充実感を感じる事は確か。そっか、やっぱり愛してるんだと一番思える瞬間なのかもしれない。
 ただ、これもいつものことだが、生み出すまでは常におのれの才能の無さに愕然とする。「これまでは偶然にもなんとか作って来れたけど、今度こそは駄目なのかもしれない。才能なんて無いくせに、なんでこんな仕事やってるんだ?」と毎回思い、自分が詐欺師のように感じたりもする。しかし、出来上がってしまえば「あはっ、やっぱ俺は天才かも(はあと)」なんて、また思ったりするから、つくづく勝手なものだ。そのような起伏を極力表に出さないように心がけてるつもりなのだが、やはり周りにとってはたまったもんじゃないんだろうなぁ。


 おっと、こういう事を書くと、「作曲家なんてロクな仕事じゃない」と思われちゃうかな?・・・いえいえ、けっしてそんなことはありませんからね(笑)。とっても素敵な仕事ですよ、はい。ただ、その素敵な仕事の中にも、紆余曲折の思いがあるって事でして・・・。いやぁ、もう少し余裕のあるときにこの原稿を書ければ良かったのですが、読み返してみるとただの愚痴でしたねこれは・・・すんません。



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