NO.51 2009/2/4

 

高木 洋  Hiroshi Takaki   ●HP

                                                           

はじめまして。高木洋(たかき ひろし)と申します。今回このコーナーを執筆させて頂くという大役を仰せつかりました。どうぞ宜しくお願いします。

普段はアニメを中心とした劇伴や、歌ものの作編曲などを主にやっております。
とあるサントラCDのライナーでも書いたのですが、ここ数年自分の出来ない事、知らない事の多さをとても実感するようになりました。個々の楽器の事、いろんなジャンルや様々な楽曲、アーティストについて、スタジオ作業のもろもろの事についてなど…。私が知っているのはそれぞれのほんの上辺の少しのところだけです。あとの大部分は基本的に知っているふりをしているだけなのです。例えば私がこういう風にしたいと思って書いた譜面が、細かなアーティキュレーションや音価の捉え方一つで実際にスタジオで演奏家のみなさんに演奏して頂くとちょっとずつ違う結果になることがよくあります。現場ではあたかもそんな風に意図して書いたような顔をしてますが、内心では「何?なんで?」とあせりまくりです。もちろんこんな私でも管弦楽法にのっているような通り一辺倒の事は知っているつもりです。この仕事を始めてから今まで、毎回のレコーディングでのそのギャップから沢山の事を学んできたわけですが、未だにそのギャップが消える事はありません。

自分の知らなければいけない事がクラシックやオーケストラの分野だけでよければまだ良いのですが、あるときこんな事がありました。とある歌ものの打ち合わせで、先方から「あの人のあの有名曲みたいな感じ」というあるテクノアーティストを例に出したオーダーがありました。「ははあなるほど」とか言いながらメモをとりましたが、すみません、そんな人見た事も聞いた事もありません。ポピュラーミュージックの世界は私のような一人の人間が知るにはあまりに広すぎ、私はその度に近所のツタヤかWAVEに行くはめになります。私が知っているのはある時代からのある程度のJ-POPSと、少しのクラシックと、ほんの少しの映画音楽とジャズくらいなものです。本来自分に出来る事などせいぜい歌のメロディだけ書いてあとはたまに下手なピアノを弾くくらいだったかもしれないと、思う事もあります。

最近は自宅でシンセサイザーやソフトウェア音源などをパソコン上に録音し、それをスタジオに持ち込んで生演奏と混ぜるというスタイルがとても多くなっています。私が「この音かっこいいなー」と思って持ち込んだベースの音が、実はエンジニアさんにとってはとてもミックスのし辛いものだったり、その他持ち込むデータにおける様々な約束事や、セオリーなど、まだまだわかってないことは沢山あります。その度にエンジニアさんにいろいろと教えてもらって少しずつ改善を続けているというのが現状です。

他の作家さんは違うのかもしれませんが、こんなにもいろんなことを知らないまま仕事をしなければならない職業って他にあるのだろうかと考える事があります。むりやりポジティブに考えれば、こんな奥の深い職業につけてなんて幸せなんだろう、といったところかもしれません。今までやってきた仕事において、いろんな方々に迷惑をかけたり、がっかりさせてしまったり、時には怒らせてしまったりしたことがたくさんあります。自分が恥をさらすのは耐えられても、まわりの方々の期待に応えられなかったときの悔しさ、申し訳なさには、耐えきれなくなる時もあります。私がいつまでもこの職業を続けていられるという保証はどこにも無いのですが、チャンスのある限り、沢山の事を知る努力、理解する努力を続けていきたい、そうして少しでも私に仕事を与えて下さるみなさん、私の音楽を聴いて下さるみなさんの期待に、応えていけたらいいなと思っています。

                      

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