NO.60 2011.8.30

       松下 耕   Ko Matsushita profile                                                     

皆さまこんにちは。松下耕です。
作曲をしたり、合唱団の指揮をしたりして生きています。
このごろは、自作曲でオーケストラを指揮する機会も増えてきました。

皆さんは、『合唱』というと、どんなイメージをもたれますでしょうか。
学校の授業で歌った思い出や、おかあさんコーラスなどを思い浮かべる方が多いでしょうか。

確かに、日本における合唱の世界は、教育や、趣味の世界に位置づけられることが多いかもしれません。
日本には、プロの合唱団は本当に少ししか存在しないのが現状です。
しかし、実はこの『合唱』という世界では、『プロよりアマチュアの技術が低い』とは一概に言えないのが面白いところなのです。

もともと、ヨーロッパでは教会の中で神に捧げる音楽として合唱が存在してきましたし、民俗音楽の範疇にも、多くの合唱音楽が存在します。
合唱は、『食っていくための手段』ではなく、『生きていくための糧』という存在、だと言えるのです。この二者、似ているけれどその意味はかなり違います。人間の根源的な存在意義を常に問い続け、それをピュアに表現するのが合唱です。ですから、商業ベースに乗りにくい。
そして、派手ではないからなかなか注目されにくい(笑)。

そして、合唱は、本番までに多くの時間を必要とします。たとえ、音が完全に、そして瞬時に演奏できる人が集まったとしても、言葉の意味がわかっていなかったり、発音が出来なければ、いい演奏にはなりません。
作曲家の三善晃先生は、「合唱音楽はワインづくりに似ている。 味わう時間は一瞬だが、それまでに、熟成させるための多くの時間を必要とする」と仰いました。
これは、けだし名言であります。

ですから、どうしても効率を考えなければならないプロという形態には、あまり向かない分野かもしれないのです(注:日本にも、世界にもすばらしいプロ合唱団は存在しますが)。
言い方を変えれば、アマチュアでも、プロと同等、もしくはそれ以上の技術と表現力を持ちえるのが、この『合唱』という分野であります。

さて、日本には、世界的なレヴェルのアマチュア合唱団が数多く存在しています。
諸外国からは、アジアにおける合唱の最も盛んな国の一つとして日本が捉えられています。
2005年には、世界合唱シンポジウムが京都で開催され、全世界から合唱のエキスパートが集いました。

合唱と、宗教的なつながりの太い、ヨーロッパ諸国で合唱の地位が高いのは言うまでもありません。
特に、旧東欧圏、北欧、バルト3国などは、合唱音楽をことのほか重要に扱っています。
以前、私がラトビアの合唱団から委嘱を受け、その作品の初演の演奏会に伺ったところ、演奏会に大統領ヴァルディス・ザトレルス氏と、文化大臣が列席され、この国の合唱の地位の高さを表していました。

近頃は、アジア各国の合唱のレヴェルも目を見張るほどの発展を遂げつつあり、我が国日本をはじめ、台湾、フィリピン、シンガポール、インドネシア、中国などの国々で、お互いに情報を交換しながら、有機的な結束のもと、発展を続けています。
私の作品には、日本の民謡など、民族、民俗音楽を題材とした作品も多いのですが、それらの作品を、諸外国の合唱団が演奏してくれているのはとても嬉しく、意義深いことだと思っています。
私たちがドイツ語の曲を歌うのと同じように、ドイツ人が日本語を歌うのです。
言葉がついた合唱音楽で、他国の言葉を演奏することは、楽器以上の感動を生むと、私は感じます。

今、世界は日本の合唱に注目しています。
これは、これまで、日本の作曲家が質の高い合唱曲を提供してきたこと、そして、合唱団の不断の努力と研究がもたらした福音だと思っています。

この拙文をお読みになられて、すこしでも合唱音楽に興味を持っていただけたら、是非ご連絡ください。
日本や、世界の楽しい合唱、すばらしい作品や演奏を、ご紹介します!

 

 

 

                                                         

 

                      

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