NO.542009.11.4
はじめまして椎名邦仁(しいなくにひと)です。JCAAの会員になってまだ半年しか経っていませんが、自己紹介を含め今回このコーナーで書かせて頂く事になりました。そうそうたるJCAA メンバーの方々に向けて何かを書くというだけで少し心が揺れますが、何とかペンを走らせてみます。
世の中本当に便利になったのか? Eメールが一般に普及した頃は不必要なくらい丁寧な返信も書いたが、今では事務的な内容なら2、3行で済ます様に心がけている。読む方も大変だし、メールの返信だけでもかなりの時間を取られるからである。 確かに日進月歩のテクノロジーの進化には眼を見張るものがあり、20年前では考えられないほど多種多様な事が一般家庭でも可能になった。自宅スタジオも今では業界スタンダートとなり、インターネットを介せば、どこにいようとセッションデータのやり取りができるし、海外とのリアルタイムレコーディングだって可能になった。また、最近ではオーディオファイルをプラグインにかければピッチの修正だけでなく、和音を一音ずつ解析してその構成音の音程まで変えられるようなプラグインまで出てきて、飽くなきテクノロジーの追求は止まるところを知らない。
予算と時間に関わらず常に最高のパフォーマンスを引き出さなければならないという職業柄、プロダクションニーズに叶うような最終形を、こうしたテクノロジーの力を駆使して効率良く進めていけるようになったは良いが、その反面、そういうスキルの持つ利便性のおかげで、作編曲家なのにエンジニアリング/マニュピュレーティング的仕事の要素までもが付加され、それが従来の仕事の範疇を超えて、本来の作曲編曲の時間を浸食する事にフラストレーションを感じる。劇伴の仕事ならスコアリングだけでも膨大な量なのに、それに加えてシンセの音決めや少なくはないトラックの録音はかなり過酷である。(勿論いつもマニュピレーターやエンジニアを家に呼べるような予算の仕事なら良いのだが、最近は中々そうはいかない。) 元々コンピューターや打ち込みが好きな方なので、テクノロジーを使いこなせて便利になったと満足していたが、実は自分自身がいつのまにか便利なソフトを使いこなせる「便利な人間」になっていたのかもしれない。一概にテクノロジーの進化による功罪とは言い切れない。自業自得か。
そんな中、最近これはと思えるコンピューターの利点がある。それは、モバイルコンピューターと小さなMIDIキーボードを持って、近所の自然が残る緑地や公園のベンチに座りメロディーやスケッチを作ったりすることである。空や雲を眺め、風や光や草木の香りを感じて音と戯れる時は至福の時間のように感じられる。まるで自然とセッションするような感覚で。結局テクノロジーの呪縛からは解き放たれていないものの、そんな時間だけはテクノロジーの利便性に感謝する。
本来スタジオでミュージシャン達とああでもないこうでもないとやりながら音の実験を通して音楽を作っていく昔ながらの方法が好きな私は、そういう方法で自分独りでは発見できえなかった音楽を作る機会を今までに沢山与えてもらった。部屋で独り作る時間も作曲・編曲の行程には必要だが、やはりコンピューターより生身の人間と直接プレイして作る音楽にぞくぞくする事が多い。最近4リズムの録音がめっきり減ってしまった事が残念でならない。ボーカルのピッチ修正も想像出来なかったプリミティブな時代の音楽に、未だに想像性をかきたてられぞくぞくする。いや、最近の音楽でもそういうアナログ的な手法に回帰して作られる音楽は好きだ。 そして勿論私が尊敬して止まないJCAAの作・編曲家の方々が作るオーケストラや生楽器の美しい音楽も大好きだ。
◎椎名邦仁(椎名KAY太) Profile
東京都出身。ニューヨーク市立大学にて作編曲を学ぶ。 女性二人のパーカッショニストをフロントにサイケデリックとエスニックテイストのミクスチャーバンド「七福神」 を結成、パワーステーション(ニューヨーク)で録音したアルバム「七福神」(VAP)を発表後、全国ツアーを回る。 解散後5年間ロサンゼルスにてCM等の音楽プロデュースに携わる。
持ち前の英語力を活かし、ジェームスブラウン、ローリングストーンズ、クレモンティーヌ、Earth Wind&Fire、 ホリーコール、ビリープレストン、ジェフポーカロ、メアリーブラック等 数々の国内外のアーティストとのセッションを成功させている。
以後、作編曲家として平原綾香、J-FRIENDS, V6, 20th Century, Re:Japan 等に楽曲を提供. また、CM, 劇伴作家として多数の映像音楽を作編曲している。
■主な作品
ドラマ主題歌
「風のガーデン」主題歌:ノクターン 挿入歌:カンパニュラの恋 平原綾香(歌) (倉本聰脚本 フジテレビ開局50周年記念ドラマ:中井貴一、緒形拳、黒木メイサ出演)
「その男、副署長」主題歌「Domani~明日をつかまえて」藤澤ノリマサ(歌) (テレビ朝日:船越英一郎、田中美里、萬田久子出演 2009年10月よりオンエア)
映画
「タイヨウのうた」小泉徳宏監督 YUI、塚本高史出演
「明日があるさーThe movie」岩本仁志監督(吉本興業創業90周年/日本テレビ開局50周年記念映画) 浜田雅功、柳葉敏郎、酒井美紀出演
「ぼくは うみが みたくなりました」福田是久監督(2009年夏公開)大塚ちひろ、伊藤祐貴出演
テレビドラマ(劇場公開作品)
「チルドレン」(放送文化基金賞テレビドラマ番組賞受賞作品)伊坂幸太郎原作、源孝志監督 坂口憲二、大森南朋、小西真奈美、加瀬亮, 三浦春馬出演 「マグノリアの花の下で」森淳一監督(ニューヨークインデペンデンスフィルムフェスティバル招待作品) 鈴木亜美、イ・ワン出演
テレビドラマ
「ナースマン」(日本テレビ)松岡昌宏、小林聡美、安倍なつみ、岸田今日子出演 「ナースマンがゆく」(日本テレビ)、松岡昌宏、香里奈、財前直見、石黒賢出演 「レッツゴー!永田町」(日本テレビ) 石橋貴明、西村雅彦、柴咲コウ、内藤剛志出演 「ガラスの牙」民放連盟優秀賞受賞ドラマ(TBS)高畑淳子、蓮佛美沙子出演 「父、帰る。」(NHK) 鳥羽潤、大路恵美出演 / 桜庭一樹原作「少女には向かない職業」(GyaO) 「三角形の定義」(フジテレビ)/「愛しき者へ」(フジテレビ)「永遠の君へ」(フジテレビ)/「レッド」(フジテレビ) 雨宮慶太原作監督「鉄甲機ミカヅキ」のメインテーマ(フジテレビ)
アニメ
「満月を探して」(TV東京)、「無限戦記ポトリス」(TV東京)、「モンキーパンチ 漫画活動大写真」(WOWWOW)、 「アズサ、お手伝いします」(ANIMAX)
CM音楽
「シャープ アクオス 」「JR東海:そうだ京都、行こう」「Nissan フーガ」「NHK どうもBSです」「ANAスーパーシートプレミアム」 「JT企業」「東京電力」「サントリービール」「スズキSwift」「ヘーベルハウス」「野村証券」「ミサワホーム」 「東芝企業」「ワンダコーヒー」「Fuji Zerox」「オロナミンC」「キャデラック」「岡三証券」「ハウス食品」 「P&Gクリニケア」等多数
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椎名邦仁
はじめまして椎名邦仁(しいなくにひと)です。JCAAの会員になってまだ半年しか経っていませんが、自己紹介を含め今回このコーナーで書かせて頂く事になりました。そうそうたるJCAA メンバーの方々に向けて何かを書くというだけで少し心が揺れますが、何とかペンを走らせてみます。
世の中本当に便利になったのか? Eメールが一般に普及した頃は不必要なくらい丁寧な返信も書いたが、今では事務的な内容なら2、3行で済ます様に心がけている。読む方も大変だし、メールの返信だけでもかなりの時間を取られるからである。 確かに日進月歩のテクノロジーの進化には眼を見張るものがあり、20年前では考えられないほど多種多様な事が一般家庭でも可能になった。自宅スタジオも今では業界スタンダートとなり、インターネットを介せば、どこにいようとセッションデータのやり取りができるし、海外とのリアルタイムレコーディングだって可能になった。また、最近ではオーディオファイルをプラグインにかければピッチの修正だけでなく、和音を一音ずつ解析してその構成音の音程まで変えられるようなプラグインまで出てきて、飽くなきテクノロジーの追求は止まるところを知らない。
予算と時間に関わらず常に最高のパフォーマンスを引き出さなければならないという職業柄、プロダクションニーズに叶うような最終形を、こうしたテクノロジーの力を駆使して効率良く進めていけるようになったは良いが、その反面、そういうスキルの持つ利便性のおかげで、作編曲家なのにエンジニアリング/マニュピュレーティング的仕事の要素までもが付加され、それが従来の仕事の範疇を超えて、本来の作曲編曲の時間を浸食する事にフラストレーションを感じる。劇伴の仕事ならスコアリングだけでも膨大な量なのに、それに加えてシンセの音決めや少なくはないトラックの録音はかなり過酷である。(勿論いつもマニュピレーターやエンジニアを家に呼べるような予算の仕事なら良いのだが、最近は中々そうはいかない。) 元々コンピューターや打ち込みが好きな方なので、テクノロジーを使いこなせて便利になったと満足していたが、実は自分自身がいつのまにか便利なソフトを使いこなせる「便利な人間」になっていたのかもしれない。一概にテクノロジーの進化による功罪とは言い切れない。自業自得か。
そんな中、最近これはと思えるコンピューターの利点がある。それは、モバイルコンピューターと小さなMIDIキーボードを持って、近所の自然が残る緑地や公園のベンチに座りメロディーやスケッチを作ったりすることである。空や雲を眺め、風や光や草木の香りを感じて音と戯れる時は至福の時間のように感じられる。まるで自然とセッションするような感覚で。結局テクノロジーの呪縛からは解き放たれていないものの、そんな時間だけはテクノロジーの利便性に感謝する。
本来スタジオでミュージシャン達とああでもないこうでもないとやりながら音の実験を通して音楽を作っていく昔ながらの方法が好きな私は、そういう方法で自分独りでは発見できえなかった音楽を作る機会を今までに沢山与えてもらった。部屋で独り作る時間も作曲・編曲の行程には必要だが、やはりコンピューターより生身の人間と直接プレイして作る音楽にぞくぞくする事が多い。最近4リズムの録音がめっきり減ってしまった事が残念でならない。ボーカルのピッチ修正も想像出来なかったプリミティブな時代の音楽に、未だに想像性をかきたてられぞくぞくする。いや、最近の音楽でもそういうアナログ的な手法に回帰して作られる音楽は好きだ。 そして勿論私が尊敬して止まないJCAAの作・編曲家の方々が作るオーケストラや生楽器の美しい音楽も大好きだ。
◎椎名邦仁(椎名KAY太) Profile
東京都出身。ニューヨーク市立大学にて作編曲を学ぶ。 女性二人のパーカッショニストをフロントにサイケデリックとエスニックテイストのミクスチャーバンド「七福神」 を結成、パワーステーション(ニューヨーク)で録音したアルバム「七福神」(VAP)を発表後、全国ツアーを回る。 解散後5年間ロサンゼルスにてCM等の音楽プロデュースに携わる。
持ち前の英語力を活かし、ジェームスブラウン、ローリングストーンズ、クレモンティーヌ、Earth Wind&Fire、 ホリーコール、ビリープレストン、ジェフポーカロ、メアリーブラック等 数々の国内外のアーティストとのセッションを成功させている。
以後、作編曲家として平原綾香、J-FRIENDS, V6, 20th Century, Re:Japan 等に楽曲を提供. また、CM, 劇伴作家として多数の映像音楽を作編曲している。
■主な作品
ドラマ主題歌
「風のガーデン」主題歌:ノクターン 挿入歌:カンパニュラの恋 平原綾香(歌) (倉本聰脚本 フジテレビ開局50周年記念ドラマ:中井貴一、緒形拳、黒木メイサ出演)
「その男、副署長」主題歌「Domani~明日をつかまえて」藤澤ノリマサ(歌) (テレビ朝日:船越英一郎、田中美里、萬田久子出演 2009年10月よりオンエア)
映画
「タイヨウのうた」小泉徳宏監督 YUI、塚本高史出演
「明日があるさーThe movie」岩本仁志監督(吉本興業創業90周年/日本テレビ開局50周年記念映画) 浜田雅功、柳葉敏郎、酒井美紀出演
「ぼくは うみが みたくなりました」福田是久監督(2009年夏公開)大塚ちひろ、伊藤祐貴出演
テレビドラマ(劇場公開作品)
「チルドレン」(放送文化基金賞テレビドラマ番組賞受賞作品)伊坂幸太郎原作、源孝志監督 坂口憲二、大森南朋、小西真奈美、加瀬亮, 三浦春馬出演 「マグノリアの花の下で」森淳一監督(ニューヨークインデペンデンスフィルムフェスティバル招待作品) 鈴木亜美、イ・ワン出演
テレビドラマ
「ナースマン」(日本テレビ)松岡昌宏、小林聡美、安倍なつみ、岸田今日子出演 「ナースマンがゆく」(日本テレビ)、松岡昌宏、香里奈、財前直見、石黒賢出演 「レッツゴー!永田町」(日本テレビ) 石橋貴明、西村雅彦、柴咲コウ、内藤剛志出演 「ガラスの牙」民放連盟優秀賞受賞ドラマ(TBS)高畑淳子、蓮佛美沙子出演 「父、帰る。」(NHK) 鳥羽潤、大路恵美出演 / 桜庭一樹原作「少女には向かない職業」(GyaO) 「三角形の定義」(フジテレビ)/「愛しき者へ」(フジテレビ)「永遠の君へ」(フジテレビ)/「レッド」(フジテレビ) 雨宮慶太原作監督「鉄甲機ミカヅキ」のメインテーマ(フジテレビ)
アニメ
「満月を探して」(TV東京)、「無限戦記ポトリス」(TV東京)、「モンキーパンチ 漫画活動大写真」(WOWWOW)、 「アズサ、お手伝いします」(ANIMAX)
CM音楽
「シャープ アクオス 」「JR東海:そうだ京都、行こう」「Nissan フーガ」「NHK どうもBSです」「ANAスーパーシートプレミアム」 「JT企業」「東京電力」「サントリービール」「スズキSwift」「ヘーベルハウス」「野村証券」「ミサワホーム」 「東芝企業」「ワンダコーヒー」「Fuji Zerox」「オロナミンC」「キャデラック」「岡三証券」「ハウス食品」 「P&Gクリニケア」等多数