NO.84
平部やよい
084_main.jpg

 日頃から電子オルガン奏者としてElectoneを媒体に作曲をして来た為か、私の作曲意欲を掻き立てる生楽器は、和音を奏でられる、或いは少しでも重音が鳴らせる楽器を選択する場合が多いのです。隔年開催し11回目を終えた作品集を中心としたリサイタルでも、必ず電子オルガンのsoloだけでなくguestを迎え、他の生楽器との曲を書き下ろして共演して来ました。 Vc. Pf. Vln. Mar. Sax. Perc. 二重絃箏 Guit. Tp. Accord. Band. 弦楽四重奏 Sax.Quartet 以上で、Perc. ではスティールドラムを、又 Tp.はゲストに曽我部清典氏を迎え、独自に開発されたゼフュロスというトランペットにトロンボーンのようなスライドをドッキングさせた楽器も使いました。皆さんご存知の通り弦はダブル等 和音が出せますし、管も特殊奏法で倍音が同時に出せます。曽我部さんは、二本同時に咥え吹かれていた時もありましたが。。。アンサンブルの楽器の関係性も、旋律楽器と伴奏というような図式はあまり好きではなく、各パートが対等に響き合うのを理想として書いています。電子オルガンは確固とした独自の音色が無いに等しい代わりに七変化出来るので、どんな音質や立ち上がりが違う楽器とも互角に対話することが可能で、それが面白さの醍醐味です。願わくば、電子オルガン固有の音色を確立させたく、気の長い目標ではありますが実験しながら作品を紡いでいます。

 作曲時に心がけていることは、電子オルガンを生の楽器の代用品ではなく扱うことです。 Orch.で電子オルガン協奏曲も書きましたが、その時にはElectoneの音色にはOrch.では出せない音色を意図して作曲し、非常に神経を使いました。既存の電子オルガンの楽曲は、Orch.やBand編成の代わりに扱う作曲や編曲は沢山存在しますが、いくら生楽器に近付けようと努力はするものの、それで終わってしまっていては電子オルガンの存在価値が失せ、意味が無いと感じます。勿論、一人シンフォニーや、オペラや室内楽の伴奏、Bandを一人演奏にも使われており、それは一つの選択種として使用価値はありますがあくまで代用品としての楽器の扱われ方であり、私の目指すものではありません。他の楽器では出せない音色や響きを生み出し、他では演奏不可能な電子オルガンのための曲を書き、又、その電子オルガンと他楽器のコラボレーションにより新たな響きを創作することが、幼少からElectoneと伴に成長して来た私の使命だとも思っています。

 先日は私の好きな編成であるSaxophone Quartetのみのための作品「倖せヲ呼ぶ嶌 」を「第21回現代音楽展」に出品させて頂きました。 この編成の曲は三曲あり、今までも室内楽コンクールの課題曲やエントリー曲に数多くの団体が演奏して下さっています。室内楽の場合は、同属楽器のアンサンブルが好きで、弦楽四重奏とSax. Quartetは特に触手が湧きます。 それは、同属ならではのハモった時の得もいわれぬハーモニーに魅せられているからで、木管五重奏の時には独特の飄々とした響きはあるものの、同属のそれは得られませんでした。弦楽四重奏は一番難しい編成で特に作曲家が手を出し難く、それだけに簡単には書けない、晩年までにいい弦楽四重奏が一曲でも書けたら本望だと考えます。

 近年では、来年の2月14日に銀座のヤマハホール (スタジオ)で、自作曲を中心としたElectoneのsoloコンサートを行います。皆さま是非お越し下さい。


◎平部やよい(ひらべやよい) Profile
LECTRIC ORGAN、Compose&Arrangement
1975年 第12回インターナショナルエレクトーングランプリコンクールにてグランプリ受賞
ヤマハ音楽振興会所属 専属エレクトーンプレイヤー。国立音楽大学 演奏・創作学科 電子オルガン教授。
日本作編曲家協会会員 国際芸術連盟会員

<主な作品>
「エレクトーンとオーケストラの為の組曲」「GXシンフォニー第2番」「ピアノと打楽器の為のシンフォニー」「3本のギターとGX-1の為のシンフォニー」「懐歌」等、これらの作品をイスラエルフィルその他多くのオーケストラと共演。海外は11ヶ国42都市でコンサートを行う。その他に「嶺韻」「樹の彩」「儚」「ART 1907~1931」「Reflection of mind」「渾」「変遷の刻」「巨木の氣」「融ける石」「四つの自我」「Concentration」「Aeolusとの対話」「エトスとパトス」「研ぎ澄まされた月」「Dice」「輝きのルーツ」「瑠璃の弓張り月」「Dice」「倖せヲ呼ぶ嶌」等、数多く発表している。

<音楽制作>
1980年レイクプラシッド冬期オリンピックでのスケート渡部絵美の演技曲「クリスタル・ファンタジー」を始めとして、アルバム「フラッシュ・ポイント」を発表。1994年にCD「彩響」(日本コロムビア)をリリース。メディアを始めとした映画、ミュージカル、オペラ、博覧会パビリオン等の音楽制作と演奏を担当。
2012年で11回目を迎えたリサイタル“Chamber Tone”をサントリーホール(小)、及びヤマハホールにて開催し、エレクトーンならではの独奏曲及び 須川 展也、トルヴェール・クヮルテット、デュオ林、高田みどり、福田進一、御喜美江、曽我部清典、吉村七重、堀米ゆず子 他多彩なゲストを迎え、他の楽器とのコラボレーションを追求したジャンルを越えた作品を多く生み出している。


※掲載は所属当時

←|今月の作家トップページへ