NO.123-22023.6.19
鍋島佳緒里です。前回、自己紹介をさせて頂きましたが、今回は「車」の話題です。
27歳の時に自動車の運転免許を取得して以来、小さなヨーロッパ車に憧れドイツ車、フランス車、と乗り継いできて現在はイタリア車に乗っています。
最初はデザインに惹かれました。イタリア人のデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした車に夢中になり、中古のVW シロッコを手に入れて手入れをしながら乗っていましたが、何しろ車のことをよく知りもしないで選んだ中古車でしたから度々故障して、ゴム系統が痛んでしまったりで結局手放し、新車でVWジェッタ、Renaultルーテシア、と乗り継いできました。その頃になると、エンジンの音を聞くのが楽しく、隣にヨーロッパ車が信号待ちしていたりすると、こっそりと窓を開けてそのエンジンの音を聞くようになっていました。ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、これらの国の車はヨーロッパ車といえども全然エンジンの音が違っています。そして、同じドイツ車でもメルセデスとBMWは違うし、イギリス車でもジャグァーやベントレー、Miniクーパーでは全然違っています。しかし最も個性がそれぞれ際立っているのはイタリア車でした。ランチア、マセラティ、アルファロメオ、フィアット、アバルト….とどれも独自のエンジン音を持っています。自分が最も憧れたのはランチア デルタHFインテグラーレ、という世界ラリー選手権の競技用モデルにもなったスポーツカーでした。これもまた、ジョルジェット・ジウジアーロのデザインでした。展示会なども見に行きましたが、左ハンドルでしかもマニュアルトランスミッション車。その当時は家族がおりまして、左ハンドルならAT車という選択肢しかなく、ランチアのオーナーになるのは夢で終わりました。
さらに当時イタリア車はとにかく故障が多いというのがあり、セカンドカーを持っていないのに故障したりして演奏旅行で辿り着けなかった大変、というのもあってその点でもイタリア車を買う勇気がありませんでした。 そして結婚23年後に試練が訪れ、離婚を経験します。女性にとっての離婚は破産と同じで収入激減で、もう夢を見ている場合ではなくなり車を手放してそこから10年、マイカーを持ちませんでした。ですが辛い時代も長くは続かないもので、自分で家を買うことができて、さらにまた車を買う機会がやってきました。近くに住んでいる両親が高齢になり介護に車が必要になったのです。
マイカーを手放してからの10年間に、イタリア車はほとんど故障しない車に成長していました。もう二度とマイカーは要らない、と思った自分ですが、再び車への憧れが大きくなっていました。還暦を迎えた自分があと何台車を乗り換えられるか、と考えると、やはり好きな車を選ぼう、と思いそこから試乗のためのディーラー通いが始まりました。休日はとにかく試乗に出かけていました。特に印象深かったのはアルファロメオ ジュリエッタの試乗。エンジン音を運転席に伝える「サウンドジェネレーター」を採用していて、エンジンの音の一部を室内に美しく響かせる設計になっていました。国産車では例がありません。実際にアクセルを踏むと、非常に魅力的なエンジン音に包まれますが、エコーのようで室内は至って静かで、独特の優雅な空間が運転している間ずっと続くので夢のようでした。半年間色々試乗して、Fiat 500というおにぎりのような形の小さな車が自宅にやってきました。通常の乗用車と違ってFiat500は二気筒エンジンです。「カタカタカタカタ….」と軽いオートバイのようなエンジン音がします。この車を喜んだ父を施設に送り迎えしたのはとても良い思い出です。その後、ご縁あって現在はさそりのマークのついた、スポーツカーのAbarth=アバルト595という車に乗っています。洋服の買い物にはそれほど興味がないのに車にだけは夢中になってしまう自分。2030年までには電気自動車が普及する、と言われています。そうなると現在のスタイルのマイカー時代もどんどん形を変えていくことでしょう。この先の予想はつきませんが、やはり楽しいカーライフであって欲しい、と願っています。
◎鍋島佳緒里(なべしまかおり) Profile
1960年東京生まれ。武蔵野音楽大学卒業後、放送・演劇の分野でキャリアを積み1996年サントリーホールブルーローズにて個展演奏会開催。国内コンクール入賞後ベルギーとの往復をしながら創作活動を展開。作品はパリ国立高等音楽院を初めヨーロッパの大学で毎年のように卒業試験の課題曲に採用され、近年ではニューヨーク大学、カレッジ・オブ・ニュージャージーの卒業演奏、マスタークラスにも採用され、さらにスペイン、オーストラリア、ハンガリー、チリ等、初演、再演の機会が海外に広がっている。全音楽譜出版社、音楽之友社、カワイ出版、佼成出版社他より出版・録音発売されている。
←|今月の作家トップページへ
鍋島佳緒里
ヨーロッパ小型車に恋し続けたマイ・カーライフ
鍋島佳緒里です。前回、自己紹介をさせて頂きましたが、今回は「車」の話題です。
27歳の時に自動車の運転免許を取得して以来、小さなヨーロッパ車に憧れドイツ車、フランス車、と乗り継いできて現在はイタリア車に乗っています。
最初はデザインに惹かれました。イタリア人のデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした車に夢中になり、中古のVW シロッコを手に入れて手入れをしながら乗っていましたが、何しろ車のことをよく知りもしないで選んだ中古車でしたから度々故障して、ゴム系統が痛んでしまったりで結局手放し、新車でVWジェッタ、Renaultルーテシア、と乗り継いできました。その頃になると、エンジンの音を聞くのが楽しく、隣にヨーロッパ車が信号待ちしていたりすると、こっそりと窓を開けてそのエンジンの音を聞くようになっていました。ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、これらの国の車はヨーロッパ車といえども全然エンジンの音が違っています。そして、同じドイツ車でもメルセデスとBMWは違うし、イギリス車でもジャグァーやベントレー、Miniクーパーでは全然違っています。しかし最も個性がそれぞれ際立っているのはイタリア車でした。ランチア、マセラティ、アルファロメオ、フィアット、アバルト….とどれも独自のエンジン音を持っています。自分が最も憧れたのはランチア デルタHFインテグラーレ、という世界ラリー選手権の競技用モデルにもなったスポーツカーでした。これもまた、ジョルジェット・ジウジアーロのデザインでした。展示会なども見に行きましたが、左ハンドルでしかもマニュアルトランスミッション車。その当時は家族がおりまして、左ハンドルならAT車という選択肢しかなく、ランチアのオーナーになるのは夢で終わりました。
さらに当時イタリア車はとにかく故障が多いというのがあり、セカンドカーを持っていないのに故障したりして演奏旅行で辿り着けなかった大変、というのもあってその点でもイタリア車を買う勇気がありませんでした。 そして結婚23年後に試練が訪れ、離婚を経験します。女性にとっての離婚は破産と同じで収入激減で、もう夢を見ている場合ではなくなり車を手放してそこから10年、マイカーを持ちませんでした。ですが辛い時代も長くは続かないもので、自分で家を買うことができて、さらにまた車を買う機会がやってきました。近くに住んでいる両親が高齢になり介護に車が必要になったのです。
マイカーを手放してからの10年間に、イタリア車はほとんど故障しない車に成長していました。もう二度とマイカーは要らない、と思った自分ですが、再び車への憧れが大きくなっていました。還暦を迎えた自分があと何台車を乗り換えられるか、と考えると、やはり好きな車を選ぼう、と思いそこから試乗のためのディーラー通いが始まりました。休日はとにかく試乗に出かけていました。特に印象深かったのはアルファロメオ ジュリエッタの試乗。エンジン音を運転席に伝える「サウンドジェネレーター」を採用していて、エンジンの音の一部を室内に美しく響かせる設計になっていました。国産車では例がありません。実際にアクセルを踏むと、非常に魅力的なエンジン音に包まれますが、エコーのようで室内は至って静かで、独特の優雅な空間が運転している間ずっと続くので夢のようでした。半年間色々試乗して、Fiat 500というおにぎりのような形の小さな車が自宅にやってきました。通常の乗用車と違ってFiat500は二気筒エンジンです。「カタカタカタカタ….」と軽いオートバイのようなエンジン音がします。この車を喜んだ父を施設に送り迎えしたのはとても良い思い出です。その後、ご縁あって現在はさそりのマークのついた、スポーツカーのAbarth=アバルト595という車に乗っています。洋服の買い物にはそれほど興味がないのに車にだけは夢中になってしまう自分。2030年までには電気自動車が普及する、と言われています。そうなると現在のスタイルのマイカー時代もどんどん形を変えていくことでしょう。この先の予想はつきませんが、やはり楽しいカーライフであって欲しい、と願っています。
◎鍋島佳緒里(なべしまかおり) Profile
1960年東京生まれ。武蔵野音楽大学卒業後、放送・演劇の分野でキャリアを積み1996年サントリーホールブルーローズにて個展演奏会開催。国内コンクール入賞後ベルギーとの往復をしながら創作活動を展開。作品はパリ国立高等音楽院を初めヨーロッパの大学で毎年のように卒業試験の課題曲に採用され、近年ではニューヨーク大学、カレッジ・オブ・ニュージャージーの卒業演奏、マスタークラスにも採用され、さらにスペイン、オーストラリア、ハンガリー、チリ等、初演、再演の機会が海外に広がっている。全音楽譜出版社、音楽之友社、カワイ出版、佼成出版社他より出版・録音発売されている。